しょーしきのしょーしつてん

消失点を探そうと思います

まこさおはいいぞ

 まこさおはいいぞ。
 まこさおとは冷泉麻子×武部沙織のカップリングのことである。個人的にはこのカップリングがガルパンの中で一番好きだ。だが、今回はまずガルパンにおける百合とカップリングについて全体の概論を置きたいと思う。

 ・そもそもガルパンって百合か?
 ガルパンが百合作品かどうか、というのは正直に言って微妙なところだといってもいいだろう。作中にはっきりとこれは百合ものだなと分かる決定的な「描写」はほとんどない。だが、舞台設定の様々な場面に百合「要素」がちりばめられているということはガルパンという作品を視聴した人間には分かってもらえるだろう。まず、舞台となる大洗女子学園は名前の通り女子高である。「男が好きって百合なんだよな……」という名言があるが、ともあれこの作品にはまずほとんど男が出てこない。大洗女子と同年代の男子は全く出てこないし、出てくる男といったら彼女たちの親ぐらいのものであり、それにしたっても2人しかいない。画面を占めるのはほとんどが女子ということになる。これは立派な百合要素といってもいいだろう。また「要素」という意味ではプラウダ高校のノンナのことを忘れてはいけない。何といっても趣味が「カチューシャ日記をつけること」である。いつも自分が肩車している相手の観察日記である。穏やかじゃない空気がひしひしと、シベリアの冷気のように伝わってくるのを感じる。
 描写ほとんどない、とはいったものの、第一話でみほが沙織と華と友達になったあたりの表情からこれは百合描写ではないかという空気を察知した人もいるかもしれない。かくいう私もその一人である。だが、それこそが今回のタイトルであるまこさおはいいぞに繫がるのである。

 ・まこさおの絶妙バランスに震えろ
 一話の描写からして王道カプはみほ×沙織ではないかという人は多いだろう。もちろん私もはっきり描写されている百合描写としてはあそこが一番強いのではないかと思う。情勢が変わるのは第3話。麻子が沙織の幼馴染としてみほが率いるあんこうチームに加入することになる。幼馴染、その甘美な響にときめく者は数知れず、私もその一人である。幼馴染は百合の王道にして正道、ここに至ってまこさおを志さないわけがない。しかし、実際にまこさおの描写はほとんどないのでは? という疑問もあるだろう。だが、考えてみれば、麻子が戦車を動かすのが3話と少し遅いのは明確な理由があるように思える。それはもし麻子が一話から登場していたら、というIFを考えてみればすぐ分かる。もし麻子が一話から登場していたとすると、一話の学食のシーンで沙織が麻子を見つけてみほと華の二人に紹介することになるであろう。だが、もしそこで麻子が沙織の幼馴染として登場してしまうと、みほ・沙織・華・麻子の中で一番関係が深いのは沙織と麻子ということになってしまうのは確定的だ。そうなると主人公であるみほが慣れない環境で友だちを見つけ、再度戦車に乗り込むというこのこの物語の動機となる部分が薄まってしまうのだ。つまり、第一話としてみほをクローズアップしていかなければならない以上、みほが最初に友だちになる必要性があるのは沙織と華でなくてはならないのである。それほど幼馴染という関係は強く深いものなのである。次に仲間に加わる優花里殿は以前からみほのことを知っている訳であり、これもまた、第一話で登場させてしまうとみほと優花里殿の仲が特別に良くなりすぎてしまう。ガルパンというアニメは登場人物が仲間になる順番によって全員が程よく仲よくなるための調整をされているということができるだろう。つまり、まこさおは、描写が少ないからカップリングとして弱いとかマイナーカプであるという説は全く意味をなさず、むしろあんこうチームの中でどこか一つのカップリングた強くなりすぎないようにバランスを取るためにあのような描写をされているのだと考えるべきなのである。ご理解いただけただろうか。

 ・だが、他のカップリングを蔑ろにしたいわけではない
 まこさおの正しさについて語ってきたが、だからといって他のカップリングについて間違っているとは思わない。口を酸っぱくして言うが、ガルパンのカップリング、特にあんこうチームは非常にバランスの取れた仲の良さを我々に見せつけている。一話の描写を信じてみほ×沙織を推す者を私は否定しない。あんこうチームに限らずみほ×杏も決して悪いものではないし、みほ×まほも、みほ×エリカだって同じくらい尊いし、みほと各校の隊長のハーレムだって悪くない。大事なのは各人が各人の好きなカップリングを愛し、育てる事なのである。その中で自分にとっての一番を見つけていくのが、自分を信じる事、自分の好きなカップリングを信じることなのである。決して他のカップリングを否定することが自分のカップリングを正当化する方法ではない。

 最後なのでもう一度いっておく。
 まこさおはいいぞ。